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ソ連機の命名規則 (bis版)

ソ連機の命名規則


ソ連機の命名規則は40年の前と後で2つに分けられている。

 

<1939年頃までの命名規則>

ソ連における機体の命名は、「機体の任務・用途の頭文字を記号としたもの」+「数字」で行われていた。その記号は以下の表のとおり。出来ればロシア語での名称も併記したかったが、横幅が足りない為断念。

 

 

※:BSh-2(後のIl-2)でのもの。BSh-1(V-11のライセン生産機)では異なる文字の組み合わせによる。
※:BSh-2(後のIl-2)でのもの。BSh-1(V-11のライセン生産機)では異なる文字の組み合わせによる。

どうやらあまりお固い決まりではなく、これらは新しいタイプの機体が開発されると共にぽんぽんと作られていたらしい。

 

そして、一部例外はあるが、これに数字を付けたものが正式な機体名となる。数字はその機体がそのカテゴリーで何番目に開発されたものかを表す。

例えば、"I-5"なら「5番目に開発された戦闘機」、"TB-3"なら「3番目に開発された重爆撃機」となる。

 

ただし戦闘機のI-~系は注意が必要。これだけは後述の新たな命名規則に切り替えられた後も一部で使用されており、それらの数字は先述の「何番目か」ではない事が殆どである。例えばポリカルポフのI-180, I-185、ミコヤン・グレヴィッチのI-200(後のMiG-1), I-230, I-250, I-270、ラヴォチキンのI-301(後のLaGG-3)などだ。明らかに大きすぎる数字の場合はこのパターンであると考えていいだろう。

 

◆改良型・派生型

改良型であれば「bis(露:бис)」や「M(露:М)」が付くことがある。例として挙げると、I-15bisやMBR-2bisなど。

 

改修により用途が変更となった派生型では、「Sh(露:Ш)」「T(露:Т)」などが末尾に付け加えられる事が多い。"Sh"は襲撃機(Shturmovik)の頭から取ったもので、DI-6複座戦闘機の襲撃機型DI-6Sh(露:ДИ-6Ш)などがある。

 

◆機体名の後に付くアレ

命名とは異なるが、ツポレフ SBなどで見られる「SB 2M-103」のような表記についても解説する。

これは機体がどのエンジンを装備するタイプであるかを表すもので、正式なタイプ分けの表記である。「SB 2M-103」であれば、M-103はエンジン、2はエンジン数であるから、「SB爆撃機のM-103エンジンを2基搭載したモデル」となる。M-100Aエンジン搭載型は「SB 2M-100A」だ。

 

 

SBの場合特に勘違いされやすいが、「SB 2」や「SB-2M」という機体がある訳では無いのだ。他の機体、TB-3・DB-3・MBR-2などはハイフンと数字が付くのだが、SBは他に同コンセプト(機種別)の機体が作られなかった為にそうはならず分かり辛くなり、よく間違われるようになってしまったのだろう。「SB-1」とでも命名されていれば良かったのだが。

 

わざわざエンジン数を書く理由は謎だが、エンジン数が変化する機体も皆無ではないので、その為なのだろうか……?


<1940年以降の命名規則>

1940年頃からそれまでとは異なる新たな命名規則が定められ、当時開発中であった機体も殆どがこちらに切り替えられた。

新たな規則は「設計局名(設計者名)の頭2文字」+「奇数/偶数の数字」と定められていた。

 

<先頭部(頭二文字)>

頭に付く文字は、設計局/設計者の最初の二文字から取られる。例を挙げると、ヤコヴレフなら「Як(Yak)」、ペトリャコフなら「Пе(Pe)」、ベリエフなら「Бе」、ツポレフなら「Ту(Tu)」だ。

MiG及びLaGGの例を見るに、2人以上の設計による場合は、後ろに共同設計者の頭1文字が加わると思われる。MiG-3に携わったミコヤンさんとグレヴィッチさんなら、ミコヤンの「Ми(Mi)」とグレヴィッチさんの「Г(G)」が合わさり、「Ми・Г⇒МиГ」となる。

ラヴォチキン、グドコフ、ゴルヴノフの3人の共同設計機なら、ラヴォチキンの「Ла(La)」、グドコフの「Г(G)」、ゴルヴノフの「Г(G)」を合わせ「Ла・Г・Г⇒ЛаГГ」となる。4人の場合でも恐らく4人の頭一文字を揃えるのだろうと思われる。

 

<数字部>

それまでの命名規則は「何番目に開発されたか」であったが、新たな規則では「奇数番号が戦闘機、偶数番号が爆撃機」と定められた。戦闘機は1, 3, 5, 7, 9, 11…、爆撃機は2, 4, 6, 8, 10…を使用するという事だ。

 

気になるのは「戦闘機と爆撃機以外の機種はどうなるの?」という話だが、基本的に戦闘機以外は偶数番号が振られているようだ。偵察機は2, 4など、襲撃機も2, 6, 8, 10などが使用されている。

ただし一部の練習機だけは例外で、ヤコヴレフのYak-7、Yak-5(2代目), Yak-11などには奇数番号が振られている。

 

この命名スタイルは近年まで使用され続けているようだが(PAK-FAにもSu-50という名が付いたようであるし)、いつからか「奇数/偶数」の決まりは守られなくなっているようだ。冷戦時などは、こういった情報から新型機の機種などを特定されないようにする為だろうか?

 

<派生型>

それまでの命名と同様、その型を表す一文字、または二文字が加えられるスタイルとなっている。派生型が特に多いYak-9で例を挙げると、「Д(D)」=長距離型、「М(M)」=改良型、「Р(R)」=偵察機型などがある。他の機体でも「Т(T)」を付けて雷撃機型、「Б(B)」を付けた爆撃機型、「Ш(Sh)」を付けた襲撃機型などがある。

同じ文字でも意味が違う場合があるので注意が必要だ。Yak-9TとIl-4Tなどがこれに該当する。前者は大口径搭載型で、後者は雷撃型を示す。

 

 

派生型では無い場合のタイプ分けは、以前のものと同様「機体名」+「エンジン名」で行われる。Yak-1なら「Yak-1 M-105P」や「Yak-1 M-105PF」、Il-2なら「Il-2 AM-38」や「Il-2 AM-38F」、Pe-8なら「Pe-8 M-40」や「Pe-8 M-82」となる。場合によっては上で解説した通りエンジン数も記載する。(あまり見ないがちゃんと「Pe-8 4AM-35」と書いている物もある)

 

La-5FやLa-5FNなど、エンジン換装で名前に変化があった場合は通常エンジン名は書かない……筈。(この辺の命名はいい加減な感じがいくらか)


<その他>

=局内名称=

MiG設計局などは、正式名称(MiG-3, MiG-5 etc...)やIナンバー(I-200, I-230,)の他に、局内での開発名称も設けていた。

例えばMiG-1では、IナンバーはI-200、そして局内名称として≪X≫(Kh)と名付けられていた。

またI-220系列も、I-220は≪А≫、I-224が≪4А≫、I-225が≪5А≫とするなどしていた。

この局内での名称がどのような使い分けであったのか、どういった理由によるものかは不明だが、他にも複数の機体でこれが使われていた。

 

他にも変則的な派生型名称等ありますがキリがないのでここまで。

 

ANT~とかTsKB~とかの名称などは把握しきれていないので、いつかまた…(逃げの姿勢