世界の傑作機 (ソ連機)


信頼と実績の『世界の傑作機』シリーズ。2020年5月現在、レシプロのソ連機をテーマとしたものは、計5冊刊行されている。戦闘機が4冊と襲撃機が1冊で、残念ながら爆撃機はいまだ出ていない。

SBやPe-2、DB-3/Il-4待ってますよ文林堂さん!

 

[ラインナップ]

■『世界の傑作機 No.129 Il-2 シュツルモヴィク』

■『世界の傑作機 No.133 ポリカルポフ I-16』

■『世界の傑作機 No.138 WWII ヤコヴレフ戦闘機』

■『世界の傑作機 No.143 ラヴォチキン戦闘機』

■『世界の傑作機 No.156 第二次大戦ミグ戦闘機』

 

これらに共通して言えるのは、数少ない「日本語で書かれていて、一定の信頼を置くことのできる書籍である」ということだ。

残念ながら、国内の書籍で第二次大戦のソ連機を扱った書籍は、他主要国と比べあまりに少ない。機種ごとにテーマを据えて解説している書籍かつ現状手に入れやすいものとなると、この『世界の傑作機』を置いて他にないだろう。

そして一番のポイントは、情報が大幅にアップデートされていることだ。国内の一昔前の書籍にあるような誤った情報のほとんどは一掃されており、海外書籍と同等のレベルにまで引き上げられている。先に書いた「信頼の置ける」というのはそういうところを指している。

 

内容も、機体の開発史から機体の活躍、機体構造の解説などを幅広くカバーしていて、目立つ抜けはない。冒頭にはカラーの塗装図、現存機の写真、巻末には主要な型の図面も掲載されている。そのページ数の割には十分といえるものだ。お値段も専門的な書籍と比べるとだいぶお求めやすい。上記ラインナップの中に「知りたい!」と思った機体があれば、まずこの書籍から買ってみてもよいだろう。

 

共通部分は以上として、それぞれの書籍の内容や特徴などを記載していく。


■世界の傑作機 ポリカルポフ I-16

書籍名

世界の傑作機 No.133 ポリカルポフ I-16

出版社 文林堂
文章/解説 藤田 勝啓, 鳥養 鶴雄, 田村 俊夫, 伊沢 保穂
出版年

2009

書籍形式

ソフトカバー, 111ページ

ISBN 978-4-89319-177-9
定価 1,333円+税

ポリカルポフ氏の手掛けた戦闘機たちをテーマとした1冊。

タイトルには『ポリカルポフ I-16』とだけあるが、同時期に平行開発されていたI-15ファミリー (I-15bis, I-153含む) とI-16の2機種をメインに取り扱っている。また、I-15・I-16の主生産型と各種派生機 (高高度戦闘機型、練習機型、ラムジェット搭載機など) のほか、I-16の後継として開発されていた試作機 I-180, I-185などについても紹介されている。タイトルよりもだいぶ広い範囲を取り扱った書籍になっている。

収録されているコラムには、『ソ連戦闘機設計の王者、ポリカルポフ』と題されたものがある。これはソビエトにおける偉大な設計者の一人であるポリカルポフ氏の設計者としての歩み、そしてその盛衰が書かれている。日本語でこれほどコンパクトに纏められたものはそうない、とても貴重なものだ。

他にも、実戦を扱ったコラムでは、初陣であるスペイン内戦を始め、ノモンハン、独ソ戦 (大祖国戦争)での働きが取り上げられている。国内でのI-16と言えば、零戦の初陣や独ソ戦緒戦などの『やられ役』の話が殆どなので、読んでみると彼らに対する印象が変わってくるのではないだろうか?

収録機が多い都合か (元々『世傑』はそういうものという気もするが) 各派生型 (tip/Type) の差異についての情報が最低限のものしかなく、外見上の違いも分かり辛いところがある。この辺りは『In Action』シリーズが強いので、あわせて読むとより理解が深まるだろう。


■世界の傑作機 ラヴォチキン戦闘機

書籍名

世界の傑作機 No.143 ラヴォチキン戦闘機

出版社 文林堂
文章/解説 藤田 勝啓, 鳥養 鶴雄, 田村 俊夫, 吉田 十二雄
出版年

20011年

書籍形式

ソフトカバー, 103ページ

ISBN 978-4-89319-195-3
定価 1,333円+税

1940年から1951年にかけて、ラヴォチキンらによって開発・生産された戦闘機についてをテーマに取り扱った1冊。

全木製戦闘機―I-301の設計からLaGG-3として採用されるまでの開発史、空冷エンジンへ換装しLa-5となるまで、そしてLa-5からLa-11までの流れが纏められている。La-7からLa-9、そしてLa-11に至るまでは紆余曲折ありややこしいのだが、それが簡潔に説明されており理解しやすい。

収録されている機体は、先述のLaGG・Laシリーズのほか、LaGG-3の改良型として開発されたI-105や、La-5より先行して開発されていた空冷化モデルGu-82、Laシリーズで試験されたエンジン換装型などがある。

巻末にはLaGG-3の主要な生産ロットであるSeries 1, 4, 11, 23, 29, 35 66についての情報も記載があり、それぞれ図面も掲載されているため、視覚的にも違いを追いやすくなっている。とても評価できるポイントの一つだ。 (それぞれの生産ロットの情報はあまり多くないが……)

LaGGやLaの戦いについてまとめられたコラム『ラヴォチキン戦闘機かく戦えり』では、LaGG-3の緒戦の苦しい戦いや、LaGGでエースになったパイロット達、Bf109Fとの比較を含むLa-5の実戦評価、Laシリーズの性能向上とドイツ機との戦いなど、いくつものエピソードと共に記述されている。これだけでも他の国内の書籍とは比較にならない情報量がある。

他にも、満州に亡命したLaGG-3の試験話を扱ったものや、『世傑 I-16』にもあったような設計者の生涯をまとめたコラムも掲載されている。前者は日本から見たLaGG-3の評価となるため、だいぶ簡単にではあるが自国の液冷機・木製機などとの比較など、なかなか興味深い記述も多い。

不満点があるとすれば、LaGG-3の話がLa-5の登場までしか記載されていないことだろうか。書籍では1944年まで生産されていることが記載されているが、1942年にLaが戦場に出てからは触れられておらず、その後どう運用されたのかは窺い知ることが出来ない。「別に興味が無いからいいや」という読者も居るだろうが、個人的にはマイナスポイントであった。なおこの辺りの話は、海外書籍とはなるが『Lavochkin Fighters of the Second World War』などが詳しい。気になるのであればそちらを参照するとカバーできるだろう。(そのうちこちらも紹介ページを作ります-2020/05/22)

全木製戦闘機LaGG-3が何故開発され、どのようにしてLaシリーズとして生まれ変わり、独ソの戦いに貢献したのか。そんな疑問を解消出来る一冊だろう。


■世界の傑作機 Il-2 シュツルモヴィク

書籍名

世界の傑作機 No.129 Il-2 シュツルモヴィク

出版社 文林堂
文章/解説 藤田 勝啓, 鳥養 鶴雄, 田村 俊夫
出版年

2008年

書籍形式

ソフトカバー, 95ページ

ISBN 978-4-89319-169-4
定価 933円+税

イリューシン設計局が生んだ軍用機としては世界最多生産機数を誇る「Il-2」、そしてその後継機である「Il-10」をメインとした1冊。装甲襲撃機というジャンルの成り立ちから、Il-2が開発され各種改良をうけ、そして後継機に至るまでがまとめられている。日本語でこの辺りの話が読めるものとしては、現状 (2023年8月時点) 唯一であろう。どのようにあの発想に至ったか、そして生まれるまでの苦難がとても分かりやすいのは、読者にとって非常にありがたいところだ。

機体の構造図の類も豊富で、何がどこに配置されているか視覚的に理解しやすいところもよい。Il-2とIl-10共に掲載されているので、見比べて差異を確認してみるのもよいだろう。両機の原型機のほか、派生機などもあらかた収録されており、主たるところはこの書籍だけで知ることができる。

運用や活躍についても、一通りのイメージを掴むに十分な内容が掲載されている。

また『シュツルモヴィクの息子たち』というコラムがあり、その後継機を目指した機体たち─Il-20, Il-40, Il-102らの話も広く浅くではあるがまとめられている。これらも含め、イリューシンの襲撃機たちを知るのにとてもよい一冊となっている。

しいて悪いところを上げるとすれば……Il-10の運用に関する話が殆どないこと。確かに第二次大戦中において交戦機会に乏しかったところはあるが、朝鮮戦争についても「参加した」程度の文章しかない。

またIl-2の他国での運用についても、写真キャプションの中にしか説明がないところも気になった。当機はソ連機としては数少ない複数国で運用されたソ連のレシプロ機である。多くの人はあまり興味が無いかもしれないが、これといった活躍が無いにしても、使用した国々の羅列程度は欲しいところだった (『世傑』の他の号では、しばしば他国での運用例がよく掲載されている気がするので……HurricaneとかB-25とか)。

Moore氏の『IL-2 Shturmovik: Red Avenger』はその辺りをおさえているので、気になればそちらを参照するとよいかもしれない。単なる運用国程度ならいくらでも調べれば出てくるものであるが。


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以下準備中

■世界の傑作機 WWII ヤコヴレフ戦闘機

書籍名

世界の傑作機 No.138 WWII ヤコヴレフ戦闘機

出版社 文林堂
文章/解説  
出版年

200XX年

書籍形式

ソフトカバー, ページ

ISBN  
定価 円+税

■世界の傑作機 タイトル

書籍名

 

出版社 文林堂
文章/解説  
出版年

200XX年

書籍形式

ソフトカバー, ページ

ISBN  
定価 円+税